トム・アット・ザ・ファーム

佐賀の文化発信基地シエマ詣に行く。

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友人や映画クラスタやらで話題の新鋭グザヴィエ・ドラン監督『トム・アット・ザ・ファーム』(2013)を観てきた。

亡くなった恋人の葬儀に参列するために、彼の故郷を訪れるトム。彼の兄に本当のことを言うなと脅され、口裏を合わせることを強要され、逃げ出そうものなら力によって引き戻される。次第に農場で幽閉生活のような日々をおくることになるのだが、その兄との間には共依存のような連帯感にも似た関係が芽生え、それはどこか同姓愛の予感さえも匂わせる。

監督であり主演でもあるグザヴィエ・ドラン自身ゲイであることをカミングアウトしているし、戯曲が原作である本作に於いても、ゲイであることを作風に取り入れている。

はじめて観るドラン作品に相応しい作品かどうかといえば、必ずしもそうではないようにも思われるが、観ていて息も詰まるような閉塞感を感じさせるサイコ・サスペンスであった。

現時点で、本作しか観れていないので、推測で勝手なことを書いていくが、おそらく友人らで話題になったところとしてドラン作品の華やかさというか、おしゃれな絵作り*1というのもあるのだろう。本作では、全編を通してやや薄曇りに包まれた閉鎖性のようにも感じられる田舎町の風景と、ラストで少しだけ映し出される都会のネオンの対比を眺めていると、もっと華やかさをもった都会の場面を観たいなどと思ってしまった。が、主題が田舎町の農場を舞台にしたサイコ・サスペンスなのでそんなことを望むのは他の作品を観ればいいだけの話である。

 

佐賀の田舎町を走らせていると、どこか『トム・アット・ザ・ファーム』にも似た風景のまんまであるなと思いながら、ルーファス・ウェインライトの「Going To A Town」が脳内で再生されながら車を走らせた。この曲ありきなエンディングではあるけれど、それにしてもなぜ急にアメリカをダブらせたのかちょっと飛躍がありすぎて理解はできなかった。強者からの解放なのだろうか。


Rufus Wainwright - Going To A Town - YouTube

 

『ゴーン・ガール』につづき、新年から重たい映画が続いたのでパーッと明るくて景気のいい作品が観たくなったのも確かでR。

 

グザヴィエ・ドランのインタビュー、原作者のミシェル・マルク・ブシャールの解説、舞台となったケベック州、サウンドトラックについての連載記事。おそらくパンフレットど同じ内容が読めるのが嬉しい。

連載:映画『トム・アット・ザ・ファーム』 | 映画『トム・アット・ザ・ファーム』連動連載 - 骰子の眼 - webDICE

*1:なによりグザヴィエ・ドラン自体がとても端正なルックスで華やかである。